 | VENTURE SPOT 2008年8月号 | 一覧に戻る | |
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鶴姫 中目黒店 |
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株式会社ラ・ブレア ダイニング | 代表取締役社長:高橋知憲 氏 | |
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<創業から8年足らずで6店舗> |
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今回ご紹介するラ・ブレア ダイニングの高橋社長は、まだ30代の若さながら、すでに直営店6店
舗のオーナーである。会社の創業から8年足らず。これまで1店舗の撤退を経験しているため、実
際には起業から平均して毎年1店舗ほどのペースで出店を続けているのだ。
高橋氏の実家は、四国の愛媛で200席もある大きな和食料理店を経営している。3人兄弟の長男とし
て、そうした父親の仕事ぶりを見ながら育った高橋氏は、東京の大学へと進学するが、「サラリー
マンでは終わりたくない」との思いから、かねてより「飲食業だけはするな」と言い続けていた父
親の反対を押し切って飲食業界へと飛び込んだ。とは言え、今年で創業40年になる実家での父親
の苦労を知る高橋氏は、充分な経験も積まずにいきなり独立する、というような無謀な道を歩むこ
とはなかった。大学卒業後、まず1年間は社会勉強のために会社勤めを経験。その後3年ほどは、
都内のいくつかの和食料理店で料理の修業を重ねる。しかし、東京でのひとり暮らしは、さまざま
な誘惑や物入りなことも多く、開業のための資金を蓄えることが難しい。ふと気づけば、同じ店で
働く同僚たちもみな、「独立する」と言いつつ、なかなか資金を貯めることができていなかった。
そこで27歳の時に、さらに3年間と期限を切って実家へと戻ることを決意。実家では店の割烹カ
ウンターを任され、東京での修行の成果を試しながら、ひたすら現実の店舗経営について学んだ。
このように、夢を実現するためのステップをひとつひとつ確実に踏んで行く、そんな堅実さが高橋
氏の真骨頂なのだ。
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<地元愛媛へのこだわりが生む繁盛店> |
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実家での3年間で独立に向けた自信もつき、資金も用意できた。30歳になる直前に東京へと戻った
高橋氏は、また別の店で働きながら物件を探し、開業のための準備を始める。そしておよそ1年後
の31歳の時、恵比寿の1号店「砂漠楼」を開業したのだ。大好きな米国の砂漠をイメージさせる
店舗のコンセプトは、長い修業時代に何度も練り直した構想だった。
「1号店の物件が見つかったのは奇跡に近いですね」と、高橋氏は語る。地下で4メートル近い天
井高があり、オブジェを飾ることが出来る吹き抜けのドライエリアを持つ25坪ほどの店。そんな
空間の中に、隠れ家的な雰囲気を持つ、ちょっと怪しいエロティックな和食店。1号店はオープン
翌月の12月には順調に予約が入り始め、その客足は翌年の1月を過ぎても途絶えることはなかった。
店舗のコンセプトは現代的だが、高橋氏の料理は和食の基本を押さえた正統派だ。「もともと、食
器の上でデザインするような和食が好きだったんです」という高橋氏は、地元愛媛の食材を産直で
取り寄せ、スタイリッシュな美しい盛り付けで楽しませる。現在では、松山と今治の2箇所から送
られる食材を、松山空港から午前8時に空輸し、12時には恵比寿に到着するという自前の配送ル
ートを組み立てている。
3号店は諸々の事情から約3年で閉店したが、かつて実家で経営していた「炉端焼き」の店を再現し
た4号店「陣や」は、オープン初日から爆発的にお客を集め、今でも連日2回転以上、週末は深夜ま
で満席が続く繁盛店である。
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<米国出店と株式公開が次の目標> |
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この4月にオープンしたばかりの最新店舗「鶴姫」は、中目黒の路地にある1軒家の2階から4階が丸
ごと店になったユニークな作りだ。1階入口に飾られた鎧甲や2階の客席にタペストリーのように
掲げられた美しい着物、そして4階のVIPルームにある広いテラスなど、さまざまな仕掛けが楽し
い。同社のコンセプトは各店さまざまだが、高橋氏があくまでこだわるのは和食、そして地元愛媛
から毎日送られてくる産直食材だ。
とは言え、この8年間ずっと順風満帆だったわけではない。創業して4年目には、会社組織を意識
して高橋氏が現場を離れたところ、既存店の業績が悪化し危機的な状況を向かえたこともあった。
「人材が育っていないのに無理をして出店したせいだったんです」と高橋氏は苦笑する。それも今
では過去のことだ。
その後、将来的な展開を踏まえて郊外やビジネス街という経営環境を経験するため、溝の口と田町
という立地にも出店した。これまでの店はみな、遅くとも3ヶ月目には軌道に乗っている。来年は
いよいよ、独立前からの夢であった米国ロサンゼルスへの出店が具体的な目標として計画されてい
る。すでに物件も探し始め、構想は着々と固まりつつある。もちろん料理は和食。そもそも飲食業
を志したキッカケも、憧れていたアメリカで「スシ」がブームとなっているのを知り、和食店を経
営者となってアメリカに出店したいと思ったことから始まったのだ。
“アメリカ”と“愛媛”とを対等に愛する、そんな高橋氏は、まさに新しい時代の日本の飲食経営
者を体現する存在なのだと言えるだろう。
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会社名 : 株式会社ラ・ブレア ダイニング
店舗名 : 鶴姫 中目黒店
所在地 : 東京都目黒区上目黒2-7-11
T E L : 03-5724-8977
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