春には目黒川沿いの桜並木が美しい落ち着いた街並みの中で、隠れた“こだわりの飲食店”が軒を連 ね、業界人など“通好み”のグルメの街としても知られる中目黒。その中目黒駅からほど近いエリア に位置するのが、今回ご紹介する「和食ダイニングSora　素楽」だ。同店を経営する（有）ＯＥＣの 代表取締役、小口俊也氏は、なんとすでに中学生の時に、将来は飲食業界に進みたいと志していたと いう。しかし、小口氏が早稲田大学を卒業して最終的に就職先に選んだのは外食企業ではなく、ホテ ル業界と並んで究極のサービス業とも言える航空会社だった。現在でこそ、さまざまな経営環境の変 化によって航空会社のサービスが至上のものという時代は過ぎ去ってしまったかも知れないが、「ス チュワーデス」という女性たちの憧れの花形職業を擁して、長いあいだ、わが国の近代的な接客スタ イルの理想モデルをつくり上げてきたのが航空業界なのだ。その航空会社で、客室本部の教育担当者 として数多くのCA（いわゆるスチュワーデス）たちの指導、教育訓練に携わってきた小口氏は、接客 サービスと女性の心理という飲食店経営にとってふたつの重要なキーポイントを知りつくした、いわ ば接客サービスの超スペシャリストなのである。初めて小口氏と出会った人はみな、そのスマートで 洗練された雰囲気に驚かされる。だがそれは、こうした氏の経歴から来るものなのだ。

航空会社で新入社員の採用面接や研修などを担当していた小口氏は、当時はまだサービス業界での導 入が珍しかったパソコンを使って、新しい新入社員研修のシステムを開発したこともある。はじめは 好奇心から独学でパソコンを学んだ小口氏であるが、その知識を駆使して、ゲーム感覚でCAが業務に 必要な情報を修得できるというアイデアを立案し、新入社員向けの研修プログラムとして開発したの である。このプログラムによって、従来必要だった研修期間を３日間も短縮することに成功し、研修 にかかるコストを大幅に削減したという成果によって小口氏は副社長賞を受けている。またこの時 期、勤務する航空会社として初の大型機導入となる、ボーイング７７７（トリプルセブン）の導入プ ロジェクトにも参加するなど、企業人としても充実した日々を送っていた。しかし世紀末を迎える１ ９９９年、３０歳の誕生日を目前にして、国際路線の就航がはじまりさらに飛躍を見せる航空会社を すっぱりと退社した小口氏は、いよいよ長年の夢であった飲食業での独立に動き出す。まず会社を経 営する父親とふたりで横浜市青葉区に本格的な「蕎麦料理店」をオープンさせ、１年間蕎麦職人とし ての技術を学び、同時に会社の取締役として店舗経営の基礎を学んだ。その後、自らが経営者として 起業し店舗を運営するときのために、都内の料亭をはじめとして数多くの店舗で勤務を重ね、あらゆ る和食の調理と店舗運営のノウハウを２年間にわたって身につける。中でも、ある鮮魚商社で働いて いた際には、短期間で包丁捌きに精通するという目的のために、あえて毎日５００尾近いさまざまな 種類の魚をひたすら捌き続けるというキツイ仕事に就くなど、常に自ら目標となる課題を課しながら 修業を重ねたのである。

そのような数年間の経験を経て、世紀も変わった２００１年の４月、小口氏は現在の会社を設立し、 自分自身のプロデュースによる和食ダイニングの店「Sora（素楽）」を中目黒に開店した。同店で は、これまで身につけてきた仕入れの知識や食材を吟味する目利きの腕を活かし、旬の素材を使った 刺身や炭火焼、自家製とうふ、馬刺し、店内で打った手打ちの蕎麦など、四季の食材の数々を気楽に 楽しめるスタイルで提供している。最近では、店内に個室を設けるなど、常に新しい企画にチャレン ジしている同店は、中目黒でも隠れた人気店のひとつだ。また、小口氏が経営する会社（有）OECで は、これまで都内をはじめ静岡や松江など全国各地で飲食店のプロデュースも行ってきた。その他に も、ニューヨークの雑貨や食材などをインターネットを通じて販売するネットショップの運営、航空 会社時代の経験を活かした研修マニュアルづくりなど外食企業のコンサルティング、さらに山形県庄 内地方の青果食材をブランド化するプロジェクトに参加してホームページによるプロモーション活動 のサポートを行うなど、さまざまな方面で事業を拡大し続けている。現在も、小口氏はこうしたいく つかのプロジェクトに関わりながら、次の展開に向けて会社の基盤づくりに奔走する毎日だ。

会社名 ： 有限会社OEC
店舗名 ： 和食ダイニングSora　素楽
所在地 ： 世田谷区奥沢5-41-5 2階　※左記の住所に移転しました。
Ｔ Ｅ Ｌ　： 03-6240-1500
Ｈ　　Ｐ ： http://oecclub.com