麹町に店を構える「German Restaurant PAUKE」は、東京で"ドイツ料理といえばここ"と知られる 店。日本に暮らすドイツ人や、ドイツ駐在経験者も多く訪れる1979年創業の老舗レストランだ。 オーナーの村田氏は、料理店を営む父親の姿を見て育ち、みずからも高校卒業後に料理の道へ。始め は大会社のレストラン部で様々な料理を習得したが、漠然と様々なジャンルの料理担当することに不 安を覚え、海外に留学して一つの料理を極めたいと強く願うようになった。留学について必死に情報 収集をし、ついに二十歳にして当時日本へ広く門戸を開いていたドイツへ留学することとなる。 半年間オーストリアの語学学校で勉強後、ドイツの古都ハイデルベルクの職業専門学校へ入学。昼は 授業、夜はホテルでの修行に励む生活を2年間続けた。専門性が定まらずに将来の進路に迷っていた 村田氏にとって、日本とは大きくことなるドイツ修行時代は刺激的で、見るもの・聞くもの全てを 次々に吸収していった。愚直なほど手作りにこだわり、しっかりとした食べ応えのある料理。その料 理を家族や友人達と、ゆっくりと時間をかけて楽しみながら味わう。そんなドイツという国の文化自 体に魅せられ、「自分には一番ドイツが合う」という気持ちを強くしていったという。

2年間の滞在が終了し帰国した村田氏は、1979年にオープンしたドイツ料理レストラン「PAUKE」のシ ェフとして働き始める。店はまさに「リトル・ジャーマニー」といった雰囲気で、訪れたとたん「こ こで働きたい！」とピンと来るものがあったという。当時オーナーであったドイツ人ルドルフ氏の考 えにほれ込み、一生ここで骨を埋めようと思ったというから、非常に幸運な出会いだったと言えるだ ろう。 オーナーから最も大切にしていた料理が、ドイツ料理の看板とも言える「アイスバイン」。塩漬けの 豚すね肉を、タマネギ、セロリなどの香味野菜や香辛料とともに数時間煮込んで作る肉料理で、飾り 気はないが、ボリュームたっぷりで素材そのままの味が絶品。その味わいは非常に繊細で、ドイツと 違って四季の気候変化が大きな日本でいつも同じ味を出すのに非常に苦労するのだそう。オーナーか ら受け継いだ秘伝のレシピをベースに、季節によってスパイスの割合を変え、いつ食べても同じ味わ いを楽しめるよう工夫をこらしているのだ。 この他にも20種揃うものソーセージも全て自家製。そしてドイツといえば外せないビールの充実ぶり も、驚くほどのもの。分厚いレシピブックに地図入りで載せられた各地のドイツビールを眺めている と、どのビールも甲乙つけがたく思わず何杯もオーダーしてしまいたくなる。 「PAUKE」の特徴はドイツ料理レストランという枠にとどまらず、ドイツ文化の発信地となっている ということだ。店内のステージでは毎日アコーディオンやポルカなどのドイツ民謡の生バンド演奏が 行われ、日本にいることを忘れてしまうような陽気な雰囲気。オープン当初から通う、もう70代のド イツ音楽ファンも多いという。 もうひとつ本場レストランの雰囲気を楽しめるのが、店の壁にも描かれている「ダイスゲーム」。ダ イスを使ったシンプルなゲームで、昔から酒場で船乗りや兵士たちが酒の肴に楽しんでいた、ヨーロ ッパではメジャーな遊び。ドイツには、今でもダイスをおいてある酒場が数多くあるのだそう。初心 者でも簡単に楽しむことができるので、誰でもヨーロッパらしい粋なお酒の楽しみ方を体験すること ができる。また、ホールスタッフも全てドイツ人で、ドイツ語の勉強のために店を訪れる人も多いの だとか。

こうしたドイツ料理をオーナーから受け継ぎ、店の発展に尽くしてきた村田氏は、現在高齢となった オーナーから店を譲りうけ、自らオーナーとして「PAUKE」の経営にあたっている。 村田氏が心をくだいているのが、PAUKEならではのあたたかなサービスと、効率化や利便性のバラン スをいかにとっていくかという部分だ。試行錯誤の結果、現在はホームページを開設して生演奏の様 子を動画で配信したり、24時間可能な予約受付システムを取り入れてお客様が予約をしやすいように するなどの工夫をしている。 今後PAUKEについて、「本当にお店のファンになって頂いて、どんな時代状況でもお店に来てくださ る人を増やしていきたい」と話してくれた村田氏。これからも古きよきドイツの良さを守りつつ、新 しい時代に合わせて進化を続けていくことだろう。

会社名 ： フィルコ有限会社
店舗名 ： German Restaurant PAUKE
所在地 ： 東京都千代田区四番町4-8
Ｔ Ｅ Ｌ　： 03-3234-2359