東京池袋の大型アミューズメント施設に出店する、わずか２坪足らずの小さなテイクアウト店舗が 「昨年の年商９６００万円」と聞けば、外食業界の売場効率の低さを知る業界人なら誰しも「そんな 馬鹿な！」と驚きの声を上げることだろう。 その店舗こそが、今回ご紹介する蓮尾氏率いるウッドボーイの「ばくだん焼本舗」池袋店である。同 社は、加盟するコンサルティング会社の店舗売上坪効率ランキングでも圧倒的な差をつけてトップを 維持しており、その業績は注目の的となっている。 この圧倒的な売場効率を誇る同社の秘密は、かつてバブル崩壊の影響を受けてそれまで携わっていた ビジネスから撤退し、失意の中で蓮尾氏が作り上げた画期的な商品「ばくだん焼」の中に隠されてい るのだ。 小麦粉などをベースにした俗に「粉もの」と呼ばれるファストフード商材の常識を覆して、何と４割 近い原価率を掛けたこの「ばくだん焼」は、直径８�p、重さ２００ｇ、中には１０種類もの具材を収 めた巨大なボール状の食べ物である。そのボリュームは、たこ焼きのちょうど８個分だ。一見する と、「巨大なたこ焼き？」と、誰もがそんな感想をもらす外見だが、この「ばくだん焼」は、決して そんな単純な発想から作られた商品ではない。ある事情から、蓮尾氏が精力を傾け、血のにじむよう な努力の結果として作り上げた、まったく新しい画期的な商品なのである。「一玉食べれば元気ばく はつ!!」をキャッチフレーズとするこの「ばくだん焼」が生み出された背景には、さらに深い秘密が 隠されていたのだ。

蓮尾氏は、かつて臨床検査技師の資格で数年間病院に勤めた以外には、これまで会社勤めの経験がほ とんどないという。もともと兄弟で始めた観光地向けの小型店舗ビジネスを幅広く展開していたが、 その後そのビジネスを基にして独立、北海道へ渡って同社をスタートさせた。 独立した当初は大成功を収めたものの、次の展開に向けて大きな設備投資を行った矢先に一転して平 成不況が訪れる。特に北海道の景気後退はことのほか厳しく、売上はそれまでの３分の１になり、蓮 尾氏は事業を諦めて北海道を後にすることとなった。もちろんどんなビジネスも成功ばかりではな い。決してめげることのない蓮尾氏だったが、現実の投資返済の負担は重かったのだ。 「また新たなビジネスをスタートさせるしかない」 そう考えた蓮尾氏は熟慮の末、不況に強いと言われる食べ物商売で再起を期すことを決意する。かつ て北海道でビジネスを行っていた際に富良野のラベンダー園で一度売り出した新商品「ばくだん焼」 を２ヶ月かけて改良し、地元である茨城の観光地で移動販売を始めたのだ。 ラベンダー園で売り出した商材とは違う、まったく新しい商品としてイチから開発された今回の「ば くだん焼」だったが、スタートした「食べ物商売」はそれまでのビジネスに比べて売上も低く、粗利 も少ない厳しい世界だった。 しかし、次第にリピートするお客が増えていく中で、蓮尾氏は自ら手がけたフードビジネスの成果に 確かな手応えを感じ始めていたのである。

「ばくだん焼」は、その開発の当初からフランチャイズ方式による店舗展開を狙った商材である。絞 り込まれたメニューにより広い厨房スペースは必要とせず、毎日店舗で仕込む生地を使いながら、ト ッピングなどによって品揃えのバリエーションを広げる。調理作業は簡単そうに見えるが、実は焼き 上げるスタッフの技術により出来上がりの美味しさには微妙な差が生まれる。だからこそ、キチンと したトレーニングによりその店ならではの美味しさを生み出し、小さな店舗で大きな売上を上げるこ とも可能なのだ。 幼なじみの大手アパレル出身の大内専務が加わり、「ばくだん焼」は2000年にCIを一新して東京デビ ュー。吉祥寺の百貨店で店前にスペースを借りた移動車による販売だった。吉祥寺での移動販売が始 まるとすぐに有力な情報誌で大きく採り上げられ、その翌年にはテレビの取材がひっきりなしに続い た。「ばくだん焼」の持つインパクトがメディアを動かしたのだ。 とは言え、「事業開始から３年ほどのあいだは、いろいろと苦労も多かったんです」と、蓮尾氏は語 る。現在は、直営店とＦＣ加盟店を併せて２０店舗にまで成長し、さらに物件待ちの契約希望者が待 機している状況である。 「私の夢は、この『ばくだん焼』が、たこ焼き、お好み焼き、もんじゃ焼きに次ぐ、第４の定番焼き 物メニューとして日本全国に広まることなんです」蓮尾氏は、そんな願いを話してくれた。 すでに蓮尾氏の頭の中には、「ばくだん焼」の爆発的な全国制覇が描かれているに違いない。

会社名 ： 有限会社ウッドボーイ
店舗名 ： 「ばくだん焼本舗」池袋店
所在地 ： 東京都豊島区東池袋1-21-1　SEGA池袋GiGO1Ｆ
Ｔ Ｅ Ｌ　： 03-5957-2277